かもめ・ひよどり・めじろ…これら、何か分かりますか?
そう、鳥の名前…ではなくて、団地の名称。横浜市の南部、JR京浜東北線の港南台駅周辺に広がるURの賃貸・分譲団地には、このような名前がついています。上記以外にもすずめ、ひばりなど、港南台一帯には“鳥シリーズ”の名称がずらりと並びます。このユニークな名付けには、実は明確な使い分けがあるとのことで、その由来を調べてみました。

そもそも港南台エリアは、大規模開発が始まる前は雑木林が広がる丘陵地。数多くの野鳥が生息していたその自然環境から、鳥の名前が採用されたそう。建設を担ったUR都市機構(当時の住宅・都市整備公団)が、大規模な団地を効率的に管理・案内するために、鳥の種類によって、賃貸は海鳥・分譲は山鳥…と分類したとか。さらに、これにちなんで、駅前にある商業施設の名称も「港南台バーズ(Birds:鳥の複数形)」と名付けられています。住む場所も、買い物をする場所も、同じモチーフの上に並んでいる。名前づくりそのものが、まちのブランド形成に寄与していたことが分かります。

この「地名以外の名称を与える」という考え方は、横浜南部のほかのニュータウンにも見られます。たとえば、金沢区の東部に広がる金沢シーサイドタウンには「さざなみ団地」「なぎさ団地」のように海辺の風景を想起させる名称があります。巨大な埋立地に新しく生まれた街であるがゆえ、元々の“地名の記憶”が薄い場所に、暮らしの情景を補うように言葉を与えていったと言えるかもしれません。

団地は、ひとつの集合住宅でありながら、実際には“ひとつの町”として成立しています。だからこそ、名称は住所としての記号にとどまらず、まちのストーリーを象徴する存在になります。港南台の「鳥シリーズ」には名前から浮かび上がる風景がありますし、戸塚区の「ドリームハイツ」は、「ドリームランド」の一帯に整備された県営と市営の団地。かつての遊園地そのものが無くなった今も、「ドリーム」の名称が生き続けています。神奈川県内で言うと「いちょう団地」「かもめ団地」などなど。さらには、新しい名称…例えば、「グリーンハイツ」「ライフタウン」と住所そのものが団地の名称という場所も生まれています。

地名を超えて、まちにテーマを与える名付け。 それは、大規模開発の中に“人が暮らす場所らしさ”をそっと加える工夫でもあります。団地の名前をたどって歩くと、都市計画図には描かれていないまちの姿が、少しだけ見えてくるのです。

written by ENJOYWORKS TIMES/Tomoko Sato