団地を上空から眺めた映像や画像。住棟が平行に整列する風景が思い浮かぶ人も多いでしょう。確かに、戦後の初期段階では「効率性」と「合理性」を最優先とした直線(並列)配置が一般的でした。しかし、時代が進むにつれ、敷地の形状、周辺環境、そして何より「居住者の生活の質」を高めるため、さまざまな配置パターンが試みられるようになったのです。

戦後、団地造成が始まったころ多く採用されたのが南北方向に住棟を並べる「直線配置」です。施工が単純で、各住戸が均等に日光を得られるため、効率性という点では理想的でした。ただし、単調な風景を生み出し、まさに「画一的」というイメージの源となってしまいました。次に登場したのが、斜面地の地形を活かした「階段状配置」「段々配置」というもの。丘陵地に建設される団地では、等高線に沿って住棟をずらしながら配置することで、建物同士の圧迫感を軽減し、各住戸にテラスや庭といった外部空間を確保したのです。この配置は、単なる機能性にとどまらず、日本の風土に寄り添うデザイン思想を反映しています。敷地の高低差が住環境の豊かさに変換される――まさに地域の特性を尊重した設計といえるでしょう。

そして、1960年代以降、より積極的なデザイン実験として「放射状配置」や「扇形配置」が採用されるようになりました。中心から複数の住棟が放射線状に広がるこの配置は、共有空間を中心に据えることで、居住者同士のコミュニティ形成を促進する意図がありました。また、各住棟が異なる方向を向くため、単調さを回避でき、街並みに動きと多様性をもたらしています。さらに洗練された配置として、複数の住棟がL字やコの字を描くパターンも登場しました。これらは外部からの視線を遮りながら、内側に共有庭園のような半公共的な空間を生み出します。プライバシーの保護と、近隣住民との適度な関係性の構築――現代的な住環境ニーズへの応答といえます。

より人間的なスケールを求める設計では、複数の住棟を小さなグループ(クラスター)に分割し、配置する手法も生まれました。大規模団地が一体の大きな集合体ではなく、小さな「街」の集まりのような構成にすることで、迷路のようなわかりやすさと、各エリアのアイデンティティを創出しています。

配置が住環境に及ぼす影響

住棟の配置は、単なる見た目の問題ではなく、居住者の日常生活に直結しています。通風と採光の確保、移動動線の効率性、防犯性、そしてコミュニティの形成――これらすべてが配置の工夫に依存しているのです。直線配置は効率的ですが、ともするとリズムのない冷たい印象を与えます。一方、地形に沿った階段状配置は、建物と自然が調和した風景を生み出し、歩きながら空間の多様性を感じることができます。放射状配置は中心部を軸としたコミュニケーションを促し、L字やコの字配置はプライバシーを守りながら近隣関係を築きやすくしています。

そんな住棟配置の変遷は、社会が何を求めていたかを物語っているのかもしれません。初期の直線配置は「いかに多く、早くつくるか」という時代の要請を反映。その後の多様な配置は、単なる「住む場所」から「暮らしの質」へと社会的関心がシフトしていったことを示しているのです。

「団地」そのものを上空から、自分の目線からさまざまな角度で見ると、その配置の意味や意義がより深く見えるのではないでしょうか。どのような空間が生まれているか、そしてなぜこの配置が選ばれたのか――その奥に隠された設計思想。団地の配置とは、過去の建築家たちが「理想の住環境」について真摯に考えた、その痕跡なのかもしれません。

written by ENJOYWORKS TIMES/Tomoko Sato